週刊オクシーズ物語
21. 涙の10ドル札!

涙の10ドル札!
いよいよライブ本番の2日前。
ジェニーがテキサスからデルタ航空に乗ってやってきた。
この日はマークが度胸試しにセッティングしてくれた『UTAMARO』でのプレライブの日。
リトル高岡JHSの仲間にとっても待ちに待ったオクシーズの初お披露目の日である。
噂が噂をよび、たくさんの同級生が集まってきた!
酔っ払いアンドレは息子と、床屋のパッツンは奥さんと。
ライブ本番で裏方のお手伝いをお願いしている同級生のシトーミとフリオン。
マークの4番目の奥さんと3人のプレスクールの息子達。応援団長のミッチー女史とお友達。
加えて『UTAMARO』常連さんたちまで。せまいトレーラーハウスが息もできないぐらい一杯になった。
オバハン3人の本気度が半端なくすごいらしい!あのマークが関わって、いったいどんなことをやるつもりなのか?
まあ、ほとんどの人が怖いもの見たさでやってきたことは間違いない。(笑)
『待ってたぜ!オクシーズ!ヒュー!!』
アンドレは飲み放題をいいことにガンガン酒を飲み、調子にのっている。
『オクシーズ、はよせーやー!ヒュー!!』
『なになに?オクシーズっていうくらいやから、ほんまにキレイなんか?楽しみやの~~!色っぽいのたのむわ!ヒューヒュー!』
なんなのこのノリ。なんだか嫌な予感・・・。オクシーズが何なのかもしらない常連さんまで混じっていた!
ついにオクシーズが初めて人前で歌う瞬間がやってきた!3人ド緊張!!しかし満面の笑みは忘れないのだ。
さあ、音楽のスタートともに後ろのドアから勢いよく踊りながら現れた!
『げーーーー!オバハンやんけ!』初めて見る常連客が叫んだ。
オバハンという言葉にアンドレが引きつった。この血の気の多い3人は異常にこのオバハンという言葉に反応する。いつ引火するかわからない非常に危険な空気だ。先日烈火のごとく怒った3人にすっかり懲りたアンドレは常連客をなだめだした。
『ままま、この人ら50過ぎのオバハンやけど、涙ぐましいくらい頑張ってるんですよ。お愛嬌でみてやりましょうや。』
アンドレ今日は珍しくまとも。(笑)でも、どさくさに紛れてしっかりオバハンというとるやんけ!
引きつりながらも笑顔継続で頑張る。と、その時、マークの子供たちのひとりが叫んだ!
『あーーーー!!このまえパパが着てたドレスや!』
3人思わずマークをみた。目をそらすマーク。爆笑の渦。アンドレが立ち上がって手をたたいて大笑い。
こんなお笑いみたいなノリで始まったスタートだから、リーダーのノゾーミのMCも絶好調!
同級生や顔見知りばかりのアットホームな雰囲気の中、ノゾーミは話し出したら止まらない。客との掛け合いがまるで漫才だ。
アンドレやパッツンとのやりとりも大いに盛り上がり、あまりのノリの良さにステージ上でターマは
『マーク、私にもジントニック持ってきて〜。大きいのでね!』と酒を飲みだす始末。
アンドレやパッツンもステージに上がり踊り出す。気がつけば予定をはるか1時間以上もオーバーしていた。
見かねたマークがラストはジェニーの『オクシーズマイラブを歌ってもらいましょう。』と割り込んだ。
ジェニーの希望通りの大トリで『オクシーズマイラブ』をジェニーは気持ちを込めて歌った。
でも、その頃には全員が酔っ払い、誰も聞いちゃいなかった!あのジェニーの魂が入った歌詞も。ジェニーの熱唱も!
本番にアクシデントはつきもの。予想外の展開が次々におこったが、まずまずの出来だったとノゾーミもターマも思っていた。
しかし、その夜の反省会で、ジェニーがいら立ちを爆発させた。
『ノゾーミ、MC長すぎるわよ!なんであんなに話すのよ。』
『え?だってみんな盛り上がってたからいいじゃない。あんなもんでしょ?』
『長くなったせいで、最後だれも聞いちゃいなかったわよ。みんな酔っぱらって。』
『ほんとう!なんで飲み放題なんかにしたのよ!あれじゃあ飲みに来たのか、オクシーズみにきたのかわからないわよ!
それになに?ドレス着たって?いつのまに?信じられない、やめてよ!』
『だだだだって、ノゾーミが前に僕に、マークがやればいいってドレスくれたやんか・・・・』
『マーク、変な趣味あんのね』にやりと笑うターマ。
『マークのことなんかどうでもいいわよ!MCが長過ぎって言ってるの!だれも私の歌を聞いてなかった。ターマまで飲むなんて信じられない!パッツンなんて完全につぶれてるし!ノゾーミのせいよ!』
『何いってるのよ、ジェニー!なんで私が責められるの??
みんなが聞いてなかったことがなんで私のせいになるの?ジェニーの力不足でしょ??
あんなに歌いたがって、私たちにあそこまでいったのよ。ちゃんと歌いなさいよ!』
『そうだよ。オクシーズマイラブをトリで歌わせてもらってなんで文句言うの?』
『力不足ですって??ちょっと二人ともなんなのよ!私は歌わせてもらっているの??
結局私にオクシーズマイラブを歌ってほしくないのよね。そういうことでしょ?よーくわかったわ!
もうノゾーミの顔なんかみたくもない!もうあんたたちとはやっていけない!!』
バーーーーーン!!!
ジェニーはテーブルに何かを叩きつけて飛び出すように出て行った!
そこには10ドル札が一枚残されていた・・・・。
啖呵を切って出て行ったのに、なぜ10ドル札ぽっちなん?
さすがしっかり者のジェニー、妙に感心するマークであった。