週刊オクシーズ物語
14. ジェニーの子ども

ジェニーの子ども
ノゾーミも続けた。
『私もそう思う。最後は未来に向けた歌詞にしたい。長介とオミツなんていらないと思う。』
『えー!ここまで出来上がってるのに何で今更?それに長介とオミツは無理!絶対入れたい! それがないと趣旨が変わるのよ。作詞者の意図を変えるような勝手なこと言わないでよ!』
長介とオミツとは、日本からはじめてミシシッピーにやってきてリトル高岡の街を築いた夫婦の像のことであり、着物を着て遥か日本の方向を指さした姿はリトル高岡のシンボルともいえる存在である。年に一度の【長介とオミツ祭り】では餅つき大会が盛大に行われることでも有名だ。長介とオミツ像のすぐそばで育ったジェニーにはおそらく特別な思いがあるのだろう。
『今更じゃなくて、今だからまだ間に合うから言ってるの。だってオクシーズがリトル高岡の人に向けて歌う歌だよ! オクシーズマイラブだよ。私たちの想いだって入れたいに決まってるでしょ。』
『そうよ。それにこの歌はどう聞いても30年リトル高岡から離れて暮らしてる人が書いた感謝の歌。 普通にリトル高岡に暮らしてる人が聞いてもピンとこないんじゃないかな。』
ジェニーは動揺していた。まさか2人がこんなことを言い出すとは夢にも思わなかったのだ。
『でもでも、もうこの歌は私の中では完成されてしまってるのよ!無理よ!』
『初めての、おそらくたった一曲のオクシーズのオリジナルソングだよ。みんなでつくりあげたいのよ。 今までだってそうしてきてたじゃない。それがなんであかんのよ!』
『私の中では100%完成されてニスまで塗って仕上がってるのよ!どう説得されても絶対に無理!』
『それだったらこれはジェニーの歌だよね。オクシーズの歌ではないよ!』
『それはおかしいでしょ。私はオクシーズのためにこの詩を書いたの。みんなが喜んで歌ってくれると信じてた。
どんなグループだって、1人の人が曲を作ってそれをグループで歌う。次は違う人が作った曲をまたグループで歌う。
それが当たり前だと思ってた。私にはみんなで一緒にということがありえない。
感性が違う人が集まってひとつのものを作り上げるなんて無理よ。私には3人で歌詞を作るなんてできないわ!』
『プロのアーティストならそうかもしれないけど、私たち素人だよ。』
『うん。普通じゃなくても私たちはそういう形にしたいな。みんなの想いが詰まったオクシーズマイラブにしたい。』
『そうよ、だいたいさ、いつジェニーが歌詞担当って決まった?もっと相談とかあってもよかったと思う。』
話はどこまでいっても平行線だった。
そしてジェニーが叫んだ!
『この曲はね、私の中の卵子(歌詞)とマークの精子(作曲)が受精して生まれた唯一無二の大事な子供なのよ!!
オクシーズマイラブ---《 生まれてみたら望まれてなかった》って副題がついてしまったわ!』