週刊オクシーズ物語
02. オクシーズ誕生!

オクシーズ誕生!
ノゾーミはブルックリン・ブリッジ・パークの芝生の上にねころびながら、
イーストリバー越しにマンハッタンの摩天楼を眺めていた。
ニューヨークでありながらまるでリゾート地にでもいるようなリラックスムード溢れるこの公園は、
ノゾーミお気に入りの毎日の散歩コースである。
かつてはノゾーミもあの摩天楼の一角で堅いスーツに身を包み、仕事をバリバリこなしていた時代があった。
50歳を越え子供も独立した今、いよいよ故郷のミシシッピーに帰ることを決め、
残り3か月となったニューヨークでの時間をのんびりと楽しんでいるところである。
ニューヨークでは仕事も趣味も存分に楽しんだ。もう思い残すことはない。
最近はじめたフェイスブックのおかげでなつかしいジュニアハイスクール時代の仲間たちとも再会できたし、
きっと故郷でも楽しい生活がまっているに違いない。目の前に流れるイーストリバーに故郷のミシシッピー川の情景を重ねながら、ノゾーミは田舎での新しい生活に期待で胸を膨らませていた。
それに加え今日のノゾーミ、昨夜のFBでのリトル高岡レボリューション応援団の話が頭から離れず、
どこかソワソワ落ち着かない。何かみえそうでみえない。高鳴るこの胸の感覚はいったい何なんだろう?
遠くに見える自由の女神の足元にはたくさんの観光客をのせたフェリーが到着しようとしている。
あの観光客たちはこのあと五番街を散策し、そのあとはブロードウエイでミュージカルを楽しむのだろうな・・・。
と、そのとき、はたと気がついた!
そうだあれだ!あれができるかもしれない!
実はノゾーミには以前から夢見ていたことがあった。その夢はとても実現不可能と思っていたが、
もしかしたらリトル高岡レボリューションの応援団をきっかけにその夢に近づけるかもしれない!!
ノゾーミのハートに熱いものが走り、点火した瞬間である。 それからのノゾーミの動きは早かった。
歌詞を書き、ダンスを考え、FB(フェイスブック)でレボリューション応援団をやりたいと反応した中から、
自分の夢に付き合ってくれそうな人物を物色する。誰にするかはすぐに決まった。
運命の12月11日。
その日の朝早く、ジェニーとターマのFBにノゾーミから突然のメッセージが入る。
『おはよう~。実はね、突然なんだけど、勝手にこんなページ作っちゃった~。 私これがやりたいんだけど、一緒にやらない? ほらレボリューションの応援団やりたいって言ってたじゃない? 次の同窓会に向けてこんなのやったら楽しいと思うんだけどどうかしら~?』
まったく突然の話である。 そこには、ノゾーミが作ったと思われる
ドリームガールズの歌となぜか日本語で作られたオリジナルの歌詞、元歌のダンス動画も貼り付けてあり、
【リトル高岡オクシーズ】というグループがすでに出来上がっていた。
いくらFBで応援団の話で盛り上がったとはいえ、それはあくまでもFB上での話。
それを本当にやってしまおうというところが、ノゾーミの思い立ったら突っ走るキャラなのである。
ちなみに『オクシーズ』とは、おばあさんのふるさと日本の高岡の『おくしい=美しい』という方言からきている。
ノゾーミの通っていたJHSはノゾーミの他にも高岡にルーツを持つ日系人が多く通っている。
高岡出身だった祖母の影響であるが、リトル高岡の日本愛好家たちは自分がいかに日本通かを競ってしまうところがある。
彼らにとって東京でも大阪でもなく、日本の地方都市『高岡』がどこよりも熱いのだ。
そして、同じように高岡に祖父母のいる同級生のオタクのモッズが、
同窓会で撮った女子の写真を『リトル高岡JHSのオクシーズたち』と題してFBにのせ、
なかなか面白い!と話題になったことがあった。今回そこからとったネーミングである。
ふざけたネーミングだけど、同窓会の宴会芸でオクシーズとして歌ったり踊ったりできればどんなに楽しいだろう。
きっと盛り上がるに違いない!そしてやるなら絶対にあれ!ビヨンセ主演のあの映画、【Dream Girls】のテーマ曲よ!
宴会芸といえども本気のパフォーマンスを目指すのよ! ノゾーミの胸は興奮で高鳴った。
楽しいことが大好きで好奇心旺盛なターマからすぐに返事がきた。
『なんか楽しそう!やるやる!』
慎重なジェニーからは彼女らしい質問がいくつか来たが、
ちょうど子供の手が離れ心にぽっかりと穴が開いていたジェニーも何か変化を求めていたのだろう。
その日のうちにOKの返事がきた。
こうして2013年12月11日、50代の同級生3人組のオクシーズが誕生したのである。