週刊オクシーズ物語

18. メンタリスト&オタク

メンタリスト&オタク

 年末になり、LAからモッズとカルロスキヨシが一緒に帰省してきた。 オクシーズのことを誰よりも応援し楽しみにしてくれているモッズ。 オクシーズという名前の生みの親でもあるモッズはジュニアハイスクール時代から芸術分野に才能の片鱗をのぞかせ、 奇抜な発想でたびたび周りを驚かせた。今はその才能を生かし、マーケティングの道で活躍している。 いつもモード系のファッションに身を包み、黒縁メガネとパイプ煙草がトレードマーク。 趣味のバイクではこだわりの改造でライダー仲間でも有名な存在だ。知識が豊富であらゆるジャンルに精通していることから、 『オタクのモッズ』と呼ばれているが、その名の通りユニークかつ誰よりも優しい男だ。 そしてこのカルロスキヨシという男もまたリトル高岡JHが生んだ異才といってもいいだろう。 大学時代からLAで芸能関係の仕事にかかわり、俳優をやっていたこともある。 今はイベントやスタジオ運営を主に行うプロダクションの社長である。

 その日、ノゾーミとターマは『UTAMARO』でモッズとカルロスキヨシに会うことになっていた。 カルロスキヨシに会うのは1年のお正月にワインバーでオクシーズ結成を報告して以来である。 モッズとともに 『UTAMARO』に現れたカルロスキヨシは黒のコートに黒のスーツ、黒のボルサリーノを目深にかぶり、 大きな鋭い眼光をその下からのぞかせていた。ひと目でわかる只者ではないオーラに店の客が一斉に視線を向ける。 もともと濃い顔ではあったが、このカルロスキヨシ、会うたびにますます濃くなっていて最近では国籍不明ですらある。

 『おう!久しぶり!二人とも元気だったか?』

 カルロスキヨシは日焼けした顔に豪快な笑顔を浮かべて入ってきた。 モッズもニコニコと初めて見るトレーラーハウスの焼き鳥バーを珍しそうに眺めまわしている。 さっそくノゾーミがマークにモッズとカルロスキヨシを紹介した。

 『オクシーズどうよ?モッズから聞いたけど、かなりいい感じに仕上がってるんだって?』

 『いやいや、ここにきてものすごく凹んでるの。どうしよう~あと10日ほどしかないのに』

 『私たちこんなレベルで人前で歌っていいのかしら? フェイスブック公開したらたくさんコメントもらったんだけど、なんだかすごいステージ期待されてるようで、 きっとみんな誤解してると思う。あのフェイスブックの写真だけみたら、私らミュージシャンに見える。』

 ノゾーミとターマは今の焦りと不安を二人に話した。 マークが横から口をはさむ。
 『いいじゃないですか。みんなにそう思わせとけばいいですよ! 今までやってきたことを自信持ってやりきれば、絶対に見た人はびっくりしますから。 こんなかっこいい50代、全米探したってどこにもいませんよ!自信持って!』

 『ね、マークって大げさでしょ~?こうやってマークに騙されながらここまでやってきたんよね、私ら。はあ~。』

 そのときカルロスキヨシがおもむろにポケットからチェーンとリングを取り出した。全員の目が彼にに向いた。
 『ちょっと見てて。このチェーンにこうしてリングを入れるだろ?でこのリングを離すとどうなると思う?』

 『下にストンと落ちるよね。』

 『だね。落ちるよね。』

 『ではやってみよう。見てて、手を離すよ。ほらっ。』

 リングはチェーンにひっかって落ちなかった!

 『えー!!なんで?』

 そのあともスプーンを凝視しただけでグニャグニャに曲げたり、 トランプを使って人が心の中で唱えた数字を言い当てたりと、様々なパフォーマンスを見せてくれた。 まだ修行中らしく、時々『ちょっと待ってね、もう一回やらせてね。』とお茶目な場面もあったが。

 『俺さ、実はメンタリストになって60歳になったらデビューするつもりなんだ』

 『えーー?!メンタリスト??!!』

 男の顔は履歴書と誰かが言っていたが、彼は会うたびに味わい深いいい顔になっている。 歳を重ねれば重ねるほどいい男になっていくカルロスキヨシ。 60歳でのメンタリストデビューの話は決して冗談ではないと思わせるものがあった。間違いなくこの男はやるだろう。

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