週刊オクシーズ物語
05. プロデューサー現る!

プロデューサー現る!
マークはカウンターそばの壁に掛けてあったギターを外して、音を鳴らし始めた。
『ちょっと歌ってみてよ』
『えーなんでなんで?無理無理!下手すぎて恥ずかしくて歌えない』
このマークという男、いろいろあって今でこそ焼き鳥バーのオヤジだが、実は音楽の世界一筋に生きてきた男である。 若いころは世界にも飛び出し、アジアの音楽シーンでもそれなりの実績を残している。あらゆる楽器を器用にこなし、歌を歌わせれば右に出るものはなく、 その甘い歌声で女性をうっとりさせる。そのせいなのか?結婚歴4回。子供は9人。ジャクソンシティでは30年もの長きにわたり『モミーハウス』というライブハウスを経営し、多くのミュージシャンに活躍の場を与え育ててきた。その名前は広くアメリカにも行き渡り、音楽をやっている人なら知らない人はいないほどの有名ライブハウスである。ある時期、ジャクソンシティ中の高校が校則で『モミーハウス』への出入りを禁止した時には、マークは高校を一校一校訪ねて回り、若者にとって音楽がいかに大切かを説いて回った。そのうち、その熱意に打たれた高校教師たちも『モミーハウス』に訪れるようになった。暴走族だった若者は、バイクをギターに替えて行き場のない気持ちを爆発させた!多くの若者がここで人生を学んで大人になったのである。そんなマークに音痴の悩みを話してしまったターマ。恥ずかしくて歌えないとかたくなに拒んでみたが、マークの手にかかれば簡単なもの、あっさりとその歌声を晒すこととなってしまった。さすが結婚歴4回を誇る男だけのことはある。
マークは首をひねった。これは一体なんだ??
長年音楽に携わってきたマークでもはじめて耳にする声。 マークはかつて住んでいたタイで、近所にあった野鳥園から聞こえる音を思い出していた。明け方になると近所に響き渡るなんとも言えない不思議な音。あれは何の声だったのだろう。ターマの歌声はその時の情景を一気に蘇らせた。
マークの胸に熱いものが走る!!
この人を何とかしたい!この人を歌えるようにしたい!
オクシーズにも興味を持った。自分と同世代のおばちゃんたちが3人で何かやろうとしている。 宴会芸とは言っているが、何か感じる普通ではない気合。 翌週、オクシーズが練習するというスタジオに行き、3人の練習を初めて見たマークは予想以上の下手っぷりと予想以上の本気度に驚いた!!再びよみがえる音楽への熱い思い。『この人たちをステージに立たせてみたい!』
マークのプロデューサー魂が一気に燃え上がった瞬間であった。
こうしてターマの音痴は、マークという心強いパートナーを引き寄せたのである!!