週刊オクシーズ物語

10. もうやってられない!

もうやってられない!誰がポール牧やねん!!

 スタジオにはすでにテキサスから到着したジェニーがストレッチをしながらみんなが来るのを待っていた。
 『おはよ~~。今日もよろしくね~~。』
 『おはよ~。コーヒー買ってきたよ~ん。』
 ノゾーミとターマが次々にスタジオ入りをする。少し遅れてマークが入ってきた。
 『すみません!子供たちの宿題みてやってたら遅くなって。』
 9人の子持ちのマーク、まだまだ子育てが終わらないようだ。ノゾーミはワクワクしていた。 だってようやくHSGが踊れるんだもの。  『さ、曲かけるよ、いい~?』とターマ。
 『OK!みんな練習してきたよね~大丈夫だよね~?』

 マークはHSGのオケをとびきりロマンティックな調べにアレンジしてくれていた。
 流れ出す音。うっとりするノゾーミ、気持ちを入れる。気分はビヨンセ。唄いながらセンターから歩き出す。 さあいよいよ一番の見せ所! 後ろからやってくるターマに右手を差し伸べる。そのタイミングで歌いながら前に出るターマ。 ノゾーミの右手に手をのせて目を合わせた。の瞬間!そこには、さぁおいでと言わんばかりにキラキラした目を見開いて、 まるでブロードウェイトップスター気取りの満面の笑みをたたえたノゾーミの顔があった!
 想像もしていなかったノゾーミのマジ顔に笑いをこらえるターマ。

 『くぅぅぅーーー!!!』

 ノゾーミ一瞬顔が曇るもそのまま続ける。
 今度は左手を差し出して、その満面の笑みをジェニーに向ける。

 『ドゥハハハハーーーーー!』ジェニー吹き出す!

 『ちょっとあんたたち、何笑ってんのよ!!』

 『だってだって、・・・くぅうう~~!』
 『なによ!なにがそんなにおかしいのよ!え?』
 『いや、ごめん、失礼!大丈夫、続けよう。クックック』

 ハワイにおばあさんがいるターマはフラダンスをやっている。ステージで笑うことは当たり前だが、 それはあくまでもナチュラルな笑顔でノゾーミのようにニカーーーーと笑う人を見たことがなかった。 ふたり、どうにか笑いをこらえ、ノゾーミも気を取り直して次の場面から始めることになった。

 ノゾーミの笑顔復活!思いっきり色っぽく腰をくねらせて歩き出す。 そしてノゾーミ一番のお気に入りの振り付け、指を鳴らしながら腰をゆらしてステップを始めた! 大げさに腰をくねらせたステップで二人に迫ってくる!ノゾーミの大きな眼をさらに大きく見開き、 ニカーーーーと満面のMAXスマイルのまま、上体を前に倒しノゾーミの顔だけが迫ってくる!!! パッチン、パッチン、パッチン!!パッチン!!迫るノゾーミ!!

 『ブハッーーーーー!!』『ヒィッーーー!!』
 ターマとジェニー、もうダメだった!笑いが止まらない!!
腹の皮がよじれんばかりに笑い転げる二人!ターマなど涙を流して爆笑している!!

 『ちょっと、何がそんなにおかしいのよ!え?』

 『だってだって、ヒィーーーー!!
 そんな顔して踊る人、初めて見た~ヒィィ~~!
 それにその振り付け、日本のポール牧みたい〜〜〜ヒィィ~~!』

 『日本のポール牧だとぉーー???どこがよ!
 ビヨンセたちこうやってるやん!ブラザーのかっこいいステップやん!違う??』

 と言いながらノゾーミ、目を大きく見開いて満面の笑みでポール牧のステップでさらに二人に迫ってきた!!
 パッチン、パッチン、パッチン!!パッチン!!

 『ヒィィ~~もうだめ~~!く・く・くるしいっーーー!やめて〜〜〜!!』
 ノゾーミのMAX笑顔の真剣さとお笑いポール牧ダンスのギャップが、ターマとジェニーの笑いのツボにすっかりはまってしまったのだ。

 ついにノゾーミがキレた!!

 『あんたたちね!私がどんなにこの曲をやりたかったかわかる? 私がオクシーズをやりたいって言ってふたりに声をかけた時、 ふたりともすぐにやりたいって言ってくれたでしょ? 本当に嬉しかったのよ!その感謝の気持ちをこの曲で表現したかったの! それなのにそれなのに・・・なんなのよ!もういやや。 これが気持ち悪いって言うんだったら、私もうあんたたちとは踊れん!私もうやめる!』
 ノゾーミは泣き出していた。

 マーク爆笑したいのをこらえながら二人をたしなめる。
 『二人とも笑ったらあかんわ。舞台では見てる人に実際の40%しか伝わらないものなんや。 ノゾーミぐらい大げさでちょうどいい。いやもっと大げさでもいいかもしれん。ノゾーミも落ち着いて! 二人とも悪気があるわけじゃない。それはわかるやろ? やめるなんて言ったらあかん。この曲はオクシーズを象徴する大事な曲、 みんな楽しみにしてた曲や。僕だって、いやもしかしたら僕が一番楽しみにしてるかもしれん。』

 『だったらマークがやればいいやん!!』

 ノゾーミはマークのスキンヘッドにアフロのウィッグを無理やりかぶせ、ドレスをマークの腕に押し込んで出て行った。 その後ノゾーミの機嫌がおさまるまでこの曲はしばらくお預けとなった。 マークがドレスを自宅の鏡の前でこっそり着たことは誰も知らない・・・。

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